【カナダ移住のメリットと英語攻略法】カナダ英語の発音の特徴5選!アメリカ英語との違いをプロが解説!

コロナ禍以降、日本企業の海外取引数が増加

コロナ禍以降、オンラインでの仕事が当たり前となり、日本企業の海外取引数が、増加しています。株式会社マルチブックのグローバル部門・海外部門のある企業で働く人520名を対象にした「コロナ下の企業の海外進出と社員の意識調査」によると、コロナ前(2019年以前)と現在の海外取引数を比較すると、約8割が増加または変わっていないことが明らかになり、今後も海外企業との取引先や、海外への進出企業が増えていく実態が明らかになりました。

カナダは企業にとって魅力的な海外拠点

海外との取引数が今後も増加が見込まれる中、日系企業の海外拠点として、注目が高まっているのがカナダです。その理由は、カナダでの人件費、法人税が、アメリカと比べて安いからです。下記の図の、財務省が発表している「諸外国における法人実効税率の国際比較」と、OECDが発表している2021年度の「Average wages(平均賃金)」にある通り、その差は一目瞭然です。

「Average wages 2021」by OECD

トロントはIT人材にとって魅力的な移住先

カナダのトロントは、世界3位のIT都市で、AIやVRなどテクノロジー企業の設立や人材獲得に力を入れています。シリコンバレーとシアトルを追い抜くために、様々な取り組みを続けてきました。アメリカの移民政策が厳格さを増しているのに対し、カナダはむしろ外国人労働者の受け入れに積極的なポリシーを採用しています。

例えば、「グローバル・タレント・ストリーム」と呼ばれるプログラムでは、スキルをもつテック人材が労働ビザを迅速に取得できるようになっています。カナダに進出するグローバル企業を誘致する連邦政府機関であるインベスト・イン・カナダは、トロントを「AIスタートアップの集中度が世界で最も高い」と宣伝しています。

また、トロントでの生活費は、シリコンバレーとは比較にならないほどのお手ごろ感があります。Mercer社が発表している「2022 Cost of Living City Ranking(2022年度の世界都市の生活費ランキング)」によると、1位は香港で、日本からは東京が9位、大阪が37位、横浜が50位、名古屋が51位にランクインしているのに対し、カナダのトロントは89位となっており、円安の状態でも、かなり生活費を抑えられる結果となっています。

一方、シリコンバレーでは、2018年時点で、4人家族で収入11万7,400ドル(約1,300万円)の世帯は、低所得層とみなされ、その給与の大半は高い家賃や生活費で失っており、その差は明らかです。

カナダ移住の最大の壁は「英語力」

カナダで駐在をする方、現地法人への転職やワーホリでの勤務を希望されている方で、下記のようなお悩みはありませんか?

「カナダ英語の聞き取りができるか不安だ。。。」
「アメリカ英語とカナダ英語の違いがわからない。。。」

このようなお悩みを持っているのは、あなただけではありません。TOEICで900点以上のスコアを持っている中上級レベルの方でも、国によって異なる、英語の発音やアクセントを聞き分けることは難しいです。その理由は、日本の義務教育で、アメリカ英語の標準語である「General American」しか習わず、他の英語の特徴を知らないからです。カナダ英語は、他の欧米諸国の英語と比べれば、アメリカ英語に非常に近い発音の特徴がありますが、プロが細かく分析すると、実際には、発音に違いがあります。では、どのようにすれば、カナダ英語を聞き取ることができるのでしょうか?

カナダ英語の「5つの発音ルール」をプロが解説

それは、カナダ英語の発音やアクセントの特徴を理解した上で、聞き取りのトレーニングをすることです。これだけで、英語の聞こえ方が、かなり上達します。これからTOEICを受験する方や、グローバル企業に勤めている方は、欧米を中心とする英語圏の発音の特徴について、理解しておくことが必要です。

この記事では、言語学と英語指導に精通した筆者が、カナダ英語の特徴を表す「5つの発音ルール」と、「カナダ英語とアメリカ英語の発音の違い」について、解説します。

ルール①Canadian Raising( /aɪ/ →/ʌɪ/ &/aʊ/→/ʌʊ/)

ice /aɪs/ の二重母音 /aɪ/ や about /əˈbaʊt/ の二重母音 /aʊ/ が、 下記の図のように、舌が持ち上げられることをCanadian raising と言います。特に、/p/, /t/, /k/, /s/, /f/ などの無声子音の前に来ている時に、Canadian raisingが起こりやすいと言われています。

Canadian raisingによる発音の変化

Canadian risingが起こると次のように、音が変化します。

• /aɪ/ → /ʌɪ/
• /aʊ/ → /ʌʊ/

※二重母音の第一要素の開始点は /ʌ/ や /ə/ などで個人差があるので、/əɪ/や/əʊ/の発音になることも多いです。

アメリカ英語では「アイ/アウ」と発音されるのに対して、Canadian raising が起こり、/əɪ/や/əʊ/の音に変化すると、「オイ/オウ」や「エイ/エウ」のように近く聞こえる場合があります。

単語アメリカ英語カナダ英語
fire/faɪr//fʌɪr/ /fəɪr/
bike/baɪk//bʌɪk/ /bəɪk/
house /haʊs/ /hʌʊs/  /həʊs/
around/əˈraʊnd//əˈrʌʊnd/ /əˈrəʊnd/

下記の動画で、アメリカ英語とカナダ英語(Canadian raisingあり)の「bike」や「house」の発音を確認できます。

Canadian raisingの解説動画↓(5:05まで)

ルール②proで始まる単語(/oʊ/)

アメリカ英語では、process、project、progressなど「pro」で始まる単語のOの部分を/ɑ/(アー)と発音するのに対し、カナダ英語では、/oʊ/(オウ)と発音します。

単語アメリカ英語カナダ英語
process/ˈprɑː.ses//ˈproʊses/
project/ˈprɑː.dʒekt//ˈproʊdʒekt/
progress/ˈprɑː.ɡres//ˈproʊɡres/

下記の動画では、カナダ英語の「process」の発音を確認できます。

processの発音動画(アメリカ)↓(1:08まで)

processの発音動画(カナダ)↓(1:05まで)

ルール③ Rの前のOの発音(/ɔ/)

カナダ英語では、「sorry」「borrow」「tomorrow」など、Rの前のOの部分を/ɔ/(オー)もしくは、/o/(オ)と発音します。アメリカ英語では、Rの前のOの部分を/ɑ/(アー)と発音します。

単語アメリカ英語カナダ英語
sorry/ˈsɑːr.i//ˈsɔːr.i/ /ˈsoːr.i/
borrow /ˈbɑːr.oʊ/ /ˈbɔːr.oʊ/ /ˈboːr.oʊ/
tomorrow /təˈmɑːr.oʊ/ /təˈmɔːr.oʊ/ /təˈmoːr.oʊ/

下記の動画では、アメリカ英語とカナダ英語の「sorry」の発音を確認できます。

sorryの発音動画↓(5:30まで)

ルール④外来語のAの発音(/æ/)

「pasta」「salsa」など外来語の下線部の”a”は、アメリカ英語では舌の後ろの部分を下げて/ɑː/(アー)と発音します。一方、カナダ英語では舌の前の部分を下げる「ア」と「エ」の中間音の/æ/(エ)で発音します。イギリス英語でもカナダ英語と同様の発音が行われます。

単語アメリカ英語カナダ英語
pasta/ˈpɑː.stə//ˈpæs.tə/
salsa /ˈsɑːl.sə/ /ˈsæl.sə/

アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いについては下記の動画をご覧ください。

アメリカ・イギリス英語の発音を身に付けるトレーニング動画↓

ルール⑤Aの発音の変化(/æ/→/a/)

アメリカ英語の「ask」「last」などの単語に現れる母音/æ/は、日本語の「エ」と「ア」のちょうど中間で、音色も「エ」と「ア」の中間のような音ですが、カナダ英語では、日本語の「ア」とほぼ同じ音色/a/で発音されます。ただし、鼻音/m n ŋ/と/g/の前ではこの傾向は見られず、アメリカ英語と同じ/æ/で発音します。

単語アメリカ英語カナダ英語
ask /æsk//ask/
last/læst//last/
advance/ədˈvæns//ədˈvæns/
transfer/ˈtræns.fɝː//ˈtræns.fɝː/

番外編:現代のカナダ英語が生まれた背景

上記のように、カナダ人の話す英語は私たちが、学校で習うアメリカ英語とは少し違います。発音はアメリカ式が中心ですが、一部イギリス式も混ざっています。カナダ英語は、なぜこのような特徴を持ったのでしょうか?社会言語学、特に北米英語を専門に研究している、マギル大学の准教授Charles Boberg氏は、現在のカナダ英語「Canadian English」が生まれた歴史的な背景について、次のように説明しています。

18世紀後半にアメリカ独立革命から逃れ、カナダに亡命した人々によって、カナダ英語の基盤が、つくられました。その後、19世紀前半から半ばにかけて、ナポレオン戦争や、ジャガイモ飢饉のため、アイルランドや、イギリス全土の人々が、カナダに移住し、多種多様なイギリス英語が、当時のカナダ英語に影響を与えました。19世紀後半には、カナダ連邦が設立され、上記の様々な地域の特色を持った英語が均一化し、現代のカナダ英語「Canadian English」が生まれました。(概略)

「Canadian English」が生まれた背景について、より深く学びたい方は、下記の動画をご覧ください。

「Canadian English」が生まれた背景

まとめ

ここまで、カナダ英語の特徴を表す「5つの発音ルール」と、「カナダ英語とアメリカ英語の発音の違い」について、解説しました。是非、この記事をお役立てください。

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参考文献

「The Canadian Encyclopedia: Canadian English」 by Dr. Charles Boberg
「The English Language in Canada: Status, History and Comparative Analysis」by Charles Boberg
「American Accents Vs. Canadian Accents: What’s the Real Difference?」by Vivienne Zhao
「OECD Data:Average wages」
「2022 Cost of Living City Ranking」by Mercer
「AI looks North: Bridging Canada’s corporate artificial intelligence gap. 」
財務省:諸外国における法人実効税率の国際比較
「PR TIMES:【コロナ下のグローバル企業の海外進出と社員の意識調査】 」
「SMARYU:【海外出稼ぎ】円安で給料2倍!英語力をつけてワーホリで稼ごう」
「BUSINESS INSIDER:リモートワークがカナダを世界のテック大国に押し上げる。トロントがベイエリア、シアトルを抜き去る日」
「東京外国語大学言語モジュール:Canadian English」

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プロフィール

  • 専属パーソナルコーチ

    瀧内俊之
    (Toshiyuki Takiuchi)

    関西学院大学で英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学について学ぶ。米国のエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出の研究に従事。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、Biz English Coach(ビズイングリッシュコーチ)を設立。

  • 学習カリキュラム監修者

    デキキス・ジョー教授
    (Joseph DeChicchis)

    関西学院大学総合政策学部教授。英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学の研究に従事。世界各国の英語アクセントに精通している。Biz English Coach(ビズイングリッシュコーチ)では、英語習得学の知見を活かし、発音矯正、文法理論、スピーキングメソッドなどの学習カリキュラムやオリジナル教材の監修を担当。

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