覚えるのが苦手でも、英単語が頭に入る”コツ”を英語コーチが解説!すぐに単語を暗記し、英会話が上達する”記憶術”

英単語を覚えることは英会話の土台づくり

言語学の世界では、英語学習の初期段階では語彙、文法、発音が3つの柱となり、特に語彙が重要であると言われています。その理由は、語彙量が少なければ、当然、英語で表現できる内容も限られるからです。英会話の土台をつくるために、単語の暗記は必須です。

香港理工大学のDavid D. Qian氏(2002)の研究によれば、語彙をどれぐらい広く・深く学習したかで英文読解の質が変わり、その大部分が、語彙力に依存していると主張しています。英語の読解力を上げるには、語彙力の強化が必要です。

しかし、覚えた単語をすぐに忘れてしまったり、何度も同じ英単語につまずいてしまう方もいらしゃるでしょう。その理由は、あなたの記憶力が悪いのではなく、単語を暗記する方法が間違っているからです。

英語コーチが教える効率的な単語の覚え方

この記事では、英語習得学に精通した英語コーチの筆者が、効率よく単語を覚え、英語力を伸ばす方法をご紹介します。単語の記憶が苦手な方や、仕事で勉強時間をあまり確保できない社会人の方でも、実践できますので、ご安心下さい。

リスニングに役立つ単語、熟語の効率的な暗記法

発音したり、聞いたりすることができない英単語が多い方は、これから説明する方法で勉強すると、英会話で単語を聞けるようになります。効率的な勉強法は次のとおりです。

リスニングに役立つ「単語を覚える手順」

多めの単語(20〜25語)を1セットとする。セット内の単語の音声を聞いて、発音しながら、英単語と日本語訳を目で見て覚える。
②日本語訳を隠して、英単語を見て発音しながら、意味をすぐ思い浮かべられるか確かめる。その後日本語訳を見て、思い浮かんだ訳が合っているか答え合わせをする。
③覚えた、覚えられていないを問わず、セット内の全単語の意味がすぐに思い浮かぶようになるまで、②を繰り返す。5周ほど行なうと効果的。
④ 翌日、前日に学習した単語の復習と新たな単語の学習を行なう。覚えた単語は②の手順でさっと確認し、まだ覚えていない単語は①〜③の手順で学ぶ。

リスニングに役立つ「発音の効果」

一番大事なことは、発音しながら覚えることです。①の手順のように、正しい発音ができないと、聞き取りができないだけでなく、自分の話す英語が、相手に伝わりません。単語の発音を真似して、声に出しながら単語を覚えていくのがポイントです。

単語の長期記憶に役立つ「遅延効果

単語の発音ができたところで、次に、大事なのが、②の単語の意味を記憶する手順です。読者の方は、「なぜ、20〜25単語を1セットで覚えるの?」と不思議に思われたでしょう。

その理由は、なるべく多くの数の単語を1セットで覚えることで、より長く記憶に残しやすくする「遅延効果」を期待できるからです。「遅延効果」とは、ある情報に出会ったあと、その情報に再び出会うまでの時間を長くして、記憶力を強化する効果のことです。

もし、「1日10単語を覚える」とう少ない数の目標を設定すると、1つ目の単語を初めて見たあと、まだ単語の意味を覚えているうちに、意味を再確認することになるため、遅延効果が働きません。記憶は「思い出そう」とするときに強化されるもの。「忘れてしまう」というタイミングで、もう一度、単語に出会うことによって、「思い出そう!」とする力が働き、単語が、記憶に残りやすくなるのです。

③の手順も同様に、遅延効果を期待しています。覚えていない単語だけを選んで記憶しようとしても、単語の意味を忘れる時間をつくれず、遅延効果が働きません。覚えている単語も、覚えていない単語も含めて1セットの単語全ての意味を確認することで、あえて、単語の意味を忘れる時間をつくり、記憶力を高めているのです。

スピーキングに役立つ単語、熟語の効率的な暗記法

実は英単語の覚え方の研究は盛んに行われ、第二言語習得(SLA:Second Language Acquisition)の分野で、様々な研究成果が出ています。第二言語習得(SLA)とは、人間が母語以外の第二言語を習得するプロセスを科学的に解明する学問のことを指します。下記のように、コロンビア大学の研究では、単語帳(words cards)で、英単語の意味を覚える学習よりも、写真(association with pictures)やトピック(association with a topic)と関連させて覚えたほうが、生徒の英単語テストのスコアが高い結果が出ています。

1. 例文を音読する(文脈で覚える)

単語帳にある例文を音読することで、シチュエーションごとの内容を学ぶことができます。スピーキングをするには、必ず文脈が重要になってくるので、例文を読むことで、どんな文脈で単語を使うのか確認すると良いです。日本語の意味だけで英単語を覚えるよりも、例文でシチュエーションと結び付けて覚えた方が、はるかに記憶に残りやすいです。

2. Googleで画像検索をする(映像やイメージで覚える)

読者の方が、よくご存じの「Googleの検索エンジン」を利用します。Googleの画像検索が実は英単語のイメージを掴むことに効果的です。言葉を使った説明や知識以外にも画像イメージから得られる、非言語的な情報も理解することに役立ちます。イメージがしづらい抽象的な単語を頭に入れるのに最適な学習法です。

例えば上の画像のようにTOEICでも頻出の”consult”を試しに画像検索してみると、お医者さんが患者さんに説明している様子や、スーツを着た女性が相手に説明している様子などの画像が出てきて、単語のイメージやどういう場面で使われそうなのかが非常に捉えやすいです。こうした情報を単語に関連付けてインプットするとリーディング・リスニングの時に瞬時に理解できるだけでなく、似たシチュエーションでスピーキングするときにも役立ちます。

3. Youglishのサイトを利用する(生の英語で覚える)

Youglishのサイトでは、ネイティブの使う生の英語に触れることで、単語の理解促進を行うことができます。確認したい単語を入力し検索にかけるとその単語を使用しているYouTube動画の単語使用場面がピックアップされます。上の画像のように、”consult”という単語を入力すると、元大統領のオバマ氏が出てきました。イギリスのEU離脱について、イギリスの元首相テレーザ氏との話し合いをした内容について述べているシーンです。

アメリカ・イギリス・オーストラリアと国別に検索を絞ることもでき、発音確認の際にも使用できます(発音も大事な語彙知識です)。さらに、対象の単語がどのような場面でどういう風に使われているかを動画で確認することで、単語の用法の理解に大いに役立ちます。

アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いについて詳しく知りたい方は、下記の動画をご覧ください。英語学習者が、アメリカやイギリスの発音の特徴を体系的に学ぶことができるように、筆者が詳しく解説しています。映画『ホリデイ』(The Holiday)のワンシーンを題材にしているので、楽しみながら、アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いを学習することができます。

ここまで、リスニングやスピーキングでに役立つ単語の覚え方について、ご紹介しました。ビジネスでは正確に自分の状況や意思をネイティブに伝えることが重要です。TPOに合わせた、正しいビジネス英語が使えるように、是非、この記事をお役立てください。


参考文献

Biz English Coach「【英語の発音矯正】「聞く・話す」ができる勉強法!リスニングもスピーキングも上達するコツを英語コーチが教えます!
David D. Qian and Mary Sched「Evaluation of an In-Depth Vocabulary Knowledge Measure for Assessing Reading Performance」
Colombian Applied Linguistics Journal 「 The Acquisition of Vocabulary Through Three Memory Strategies」

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プロフィール

  • 専属パーソナルコーチ

    瀧内俊之
    (Toshiyuki Takiuchi)

    関西学院大学で英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学について学ぶ。米国のエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出の研究に従事。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、Biz English Coach(ビズイングリッシュコーチ)を設立。

  • 学習カリキュラム監修者

    デキキス・ジョー教授
    (Joseph DeChicchis)

    関西学院大学総合政策学部教授。英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学の研究に従事。世界各国の英語アクセントに精通している。Biz English Coach(ビズイングリッシュコーチ)では、英語習得学の知見を活かし、発音矯正、文法理論、スピーキングメソッドなどの学習カリキュラムやオリジナル教材の監修を担当。

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