好きな曲で英語力アップ!Let It Beで学ぶシラブルトレーニングと音声変化のポイント
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好きな音楽で英語力を伸ばす学習法
「英語学習が続かない…」と悩んでいる方は少なくありません。そんな方におすすめしたいのが、「好きな音楽×英語」という学習アプローチです。本記事では英語コーチの筆者がビートルズの名曲「Let It Be」を例に挙げ、シラブル(音節)と音声変化を習得するための発音トレーニングの具体的な手順をご紹介します。また、洋楽学習を取り入れることによる3つのメリットや、アプリ「Genius」の活用法についても解説します。
※シラブルとは、音符1つ分の単位のことです。また、音声変化とは、話しやすくするために、音を変えて発音する現象を指します。詳しくは後ほどご説明いたします。
1. 洋楽学習の3つのメリット
1-1. モチベーションUP
・好きな曲だと、自然に「もっと聴きたい」「歌詞の意味を知りたい」という興味が湧きます。ケース・ウェスタン・リザーブ大学の白井教授の研究では、自分が面白いと感じる教材が学習意欲を高めることがわかっています。
1-2. 習慣化しやすい
日常の音楽鑑賞に、英語学習のエッセンスを加えるだけで、無理なく習慣化できます。南カリフォルニア大学教授のW・ウッド氏は、特定の状況下で繰り返される動作は継続しやすいことを指摘しています。
たとえば、毎日5分間の音楽鑑賞がすでに習慣化していたとすれば、そのあとに5分間、英語の歌詞の学習をする。新しい習慣を身につけたいと思ったら、今ある習慣と組み合わせることが大事です。
1-3. インプット効率の向上
好きなコンテンツは繰り返し聴いても飽きず、自然と語彙や発音が定着化します。早稲田大学のジェームズ・バーダマン名誉教授の研究結果からも、自分が「おもしろい」と思って読んだものは、可もなく不可もないというものに比べて、内容の定着率が1.15倍に上がったことが明らかになっています。
2. 大村由紀子さんの体験談:音楽が英語の苦手意識を変えた
ビズイングリッシュコーチの受講生である大村由紀子さんは、独学で何度も挫折し、「英語の勉強が嫌で仕方ない」と悩んでいました。しかし、筆者が提案した好きな音楽を使った学習タイムを5〜10分取り入れることで、英語学習に対する苦手意識がなくなりました。
「元々、英語学習は何をやっても苦痛でしたが、好きな音楽を使った勉強を始めたことで、自然と英語に触れる時間が増えました。おかげさまで、今では英語学習に対する苦手意識がなくなり、負荷の高いトレーニングにも前向きに取り組むことができています。」
※質の高い英語学習を行うため、負荷の高いトレーニングの合間や終了後に、音楽を使った学習を行うのがコツです。
3. 「Let It Be」を使ったシラブルトレーニングと音声変化のポイント
3-1. シラブルと音声変化の解説
以下に、日本語と英語のシラブル、音声変化について、解説します。
【日本語のシラブル (Syllable)】
シラブルとは、言葉の中の音のグループで1つの母音(あ、い、う、え、おなど)を中心に作られます
例: 「たべる」は「た」「べ」「る」の3つのシラブルに分けられます。
シラブルは、言葉のリズムを作るのに役立ちます。正確なシラブルの数で発音することでネイティブに伝わる英語を話すことができます。
【英語のシラブル (Syllable)】
母音:シラブルの中心となる音で、通常は1つの母音が含まれます。
例: 「cat」 [kæt] は、母音 /æ/ を中心とした1シラブルです。
子音:シラブルには、母音の前後に子音が付くことがあります。
例: 「cat」 [kæt] では、母音 /æ/ の前に /k/、後に /t/ が付いています。
二重母音 (Diphthongs):2つの母音が連続して1つの複合的な音として発音される場合、これらは1シラブルとカウントされます。
・例①「coin」 [kɔɪn]
ここでは /ɔɪ/ が一つの二重母音として発音され、1シラブルとなります。
・例②「loud」 [laʊd]
/aʊ/ が二重母音で、1シラブルです。
シラブルの数え方:
一般的には、単語に含まれる母音(または二重母音を1とみなす)の数がシラブルの数を示すと考えられます。しかし、以下の点に注意が必要です。
二重母音: 上記の通り、2つの母音が1つの音として発音される場合、実際のシラブル数は母音の数より少なくなります。
黙字の母音: 書かれている母音が発音されない場合もあるため、単純に文字通りの母音数では正確なシラブル数が求められないことがあります。
例:「banana」 [bəˈnænə] は「ba /bə/」「na /næn/」「na /nə/」の3シラブルと発音されますが、必ずしも文字通りの母音数だけで判断できるわけではありません。
シラブルを理解し、正しく発音することは、英語学習において非常に重要です。IPA(国際音声記号)を使って正確な発音を確認することで、より自然で伝わりやすい英語を話すことができるようになります。
【音声変化 (Phonetic Change)】
音声変化とは、ネイティブが言いやすいように音を変えて発音することです。これは、言葉をスムーズに言うために起こります。例えば、ネイティブは「going to」を「gonna」と発音したり、waterを「ウォーター」ではなく「ワーダー」と発音したりします。英語が流れるように聞こえるのはこの音声変化が起こっているからです。
3-2. Let It Be の一部歌詞(1番・コーラス抜粋)
今回は、下記のパートでのトレーニング法の解説を行います。
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it beLet it be, let it be, let it be, let it be
Whisper words of wisdom, let it be
※著作権の関係上、全文掲載は控えています。
3-3. シラブル分割の具体例
発音記号の表記については、上記をご参照ください。(American Accentsより引用)シラブルごとに分割することで、発音のリズムや強弱が明確になります。以下の分割例をご覧ください。(Soundで表記)
When I find myself in times of trouble
weh nai fain mai-sel fin taim zuhv truh-bl
Mother Mary comes to me
muh-thur meh-ri kumz tuh mi
Speaking words of wisdom, let it be
spee-king wer dzuhv wiz-duhm le di bi
Let it be, let it be, let it be,
let it be le di bi le di bi le di bi le di bi
Whisper words of wisdom, let it be
whis-per wer dzuhv wiz-duhm le di bi
【シラブル表記の注意点】
・「wehn ai」は「when I」と通常は「wehn ai」と分割されますがwhenの末尾の/n/とIのaが連結するため「weh nai」と表記しています。
・「my-self in」は通常「my-self in」と分割されますが、末尾の /f/ と次頭の /i/ が連結するため「mai-sel fin」と表記しています。
・「words of」は通常「werdz uhv」と分割されますが、/dz/ と /uhv/ が連結して、より滑らかな「wer dzuhv」となっています。
・「let it」は通常「let it」と分割されますが、①letの/t/がフラップT(ラ行化)し、itの/i/と連結するため、②itの/t/が脱落するため「le di」と表記しています。
【練習のポイント】
①各シラブルをゆっくり確認し、発音の正確さを意識する。
②音声変化(連結やラ行化、脱落など)の発音を身に着ける。音声変化について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
③ストレスの置かれているところを中心にリズムをつけて発音する。
3-4. 音声変化のルール
連結:単語の最後の子音と次の単語の母音がつながる
例:「words of(ワーズアブ)」→「werdzuhv(ワーザブ)」
単語の語尾の子音と次の単語の母音が自然とつながるよう意識して練習しましょう。
フラップT(ラ行化):/t/が母音と母音にはさまれると日本語のラ行のような発音になる
例:「water(ウァーター)」→「wahder(ワーダー)」、「butter(バター)」 → 「buhdder(バダー)」
アメリカ英語特有の音声変化で、/t/が母音と母音に挟まれると、日本語の「ラ行」のような音に変化します。これにより、発音がより滑らかになります。
脱落:脱落は、単語やフレーズの中で特定の音が発音されなくなる
例:next day → 「nehks dei(ネクス デイ)」、「friendship(フレンドシップ)」 → 「frenship(フレンシップ)」
nextやfriendshipの/t/が脱落して発音されています。特に、/t/や/d/が子音に挟まれる場合に起こりやすいです。
これらの音声変化のルールを理解し、実際の会話やリスニング練習で意識することで、英語の発音や聞き取り能力を向上させることができます。英語らしいアクセントやリズムを意識しながら、リピートや音読、シャドーイングの練習で音声変化を再現できるよう練習しましょう。
3-5. シラブルと音声変化の練習
- ゆっくり音読から開始
シラブルごとに区切り、正確な発音を確認する。単語単位からチャンク単位で再現できるよう練習する。 - シャドーイング
リズムに合わせ、何度も繰り返し練習する。つまづいた箇所の発音や音声変化について確認し、再度音読する。音読がスムーズにできるようになったらシャドーイングに戻る。 - 録音&添削
シャドーイングの発音を録音し、フィードバックを得ることでさらにブラッシュアップする。英語スクールのコーチやオンライン英会話のネイティブの先生にチェックしてもらうのがオススメです。
4. Geniusで歌詞と背景をチェック
英語学習において、Geniusは大変便利なツールです。特に洋楽の歌詞を調べたり、その意味や解釈、作曲にまつわる背景知識を知りたいときに便利です。Spotifyでも歌詞のバックグラウンドを表示する際にGeniusが連携されているので、このサービス自体を知ってる人もいるかもしれません。Geniusには下記のよう機能があります。ぜひ、活用してください。
Now Playing機能:再生中の曲を自動認識して、すぐに歌詞が表示される。
ファン注釈・アーティストコメント:曲の意味や背景情報が豊富にあり、学習意欲をさらに引き出します。
5. 実践ステップ:洋楽で英語を習慣化する方法
大村さんが取り組んだステップを以下にまとめます。
- 好きな曲を選ぶ
テンポがゆっくりで、歌詞がはっきりしている曲を選ぶと効果的。 - Geniusで歌詞をチェック
わからない単語や背景を調べ、曲のストーリーに親しむ。 - シラブル分割と音声変化の意識した発音練習
リンキングやフラップTを意識しながら、正確な発音を目指す。 - 繰り返し聴いて口ずさむ
自然なリズムで何度も練習し、発音と語彙の定着を図る。
6. まとめ:音楽で英語学習が楽しい学びに
モチベーションアップ:好きな曲が学習意欲を刺激し、楽しく続けられる。
習慣化のしやすさ:日常の音楽鑑賞に英語学習が組み込まれ、無理なく継続できる。
効果的なインプット:シラブルトレーニングと音声変化の理解により、発音やリズムが自然と身に付く。
英語学習が苦しいのはやり方が悪いだけです。「好きなこと」と結びつけることで、驚くほど楽しく続けられます。ぜひ、一度「Let It Be」を使ったシラブルトレーニングを試してみてください!
7. おわりに
今回ご紹介した「Let It Be」を使ったトレーニングをぜひ実践してみてください。音楽の力を借りることで、英語学習がより楽しく、効率的になります。今後も、具体的なトレーニング法をご紹介していきます。
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プロフィール
- 専属パーソナルコーチ
瀧内俊之
(Toshiyuki Takiuchi)関西学院大学で英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学について学ぶ。米国のエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出の研究に従事。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、ビズイングリッシュコーチを設立。
- 学習カリキュラム監修者
デキキス・ジョー教授
(Joseph DeChicchis)関西学院大学総合政策学部教授。英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学の研究に従事。世界各国の英語アクセントに精通している。ビズイングリッシュコーチでは、英語習得学の知見を活かし、発音矯正、文法理論、スピーキングメソッドなどの学習カリキュラムやオリジナル教材の監修を担当。