「staff」は不可算名詞かつ集合名詞!正しい使い方とネイティブ感覚を身につける勉強法

「staff」の誤用が信頼を損なう?

経営者が、海外の取引先に、自社の事業や社員の紹介をする時に、「staff(スタッフ、社員、従業員)」の単語がよく会話に出てきます。しかし、この「Staff」の使い方で、会社の信用を失ってしまうかもしれません。もし、あなたが、取引先のアメリカ人の社長に、「新しいスタッフが2名入りました。」と伝える時に、どのような英語を使いますか?「a staff」や「two staffs」を思い浮かべた方は要注意です。

スタッフが複数いるなら「staffs」と言いたくなる気持ちはよくわかります。しかし、残念ながら、これは誤りです。複数形の「staffs」は「杖」や「こん棒」を指すので、「We have two new staffs.」は「新しい2本の杖を持っている」という意味になってしまいます。

正解は下記の通りです。

We have two new members of (my or our) staff.
We have two new staff members.
We have two new employees.

日本人がよく使うスタッフは、集合名詞(後述)で、「働いている社員全体」を表します。

「2名の社員」は、「two staff members」もしくは、「two members of (one’s) staff」を使います。「staff」の代わりに、「employees」を使用すれば、「two employees」が正解です。

日本人がよく使う「スタッフ」は、英語では集合名詞(後述)としての「staff」を指し、一人一人を直接「staff」と呼ぶことはありません。「一人のスタッフ」は、「a staff member」と表現する必要があります。

可算名詞と不可算名詞

日本人が「staff」の使い方を間違えるのは、可算名詞(数えられる名詞)と不可算名詞(数えられない名詞)の区別を苦手としているからです。日本語にはこうした区別がないため、英語ならではの考え方(ネイティブの感覚)を理解することが大切です。

可算名詞(数えられる名詞)

はっきりとした形があり、1つ2つと数えられるものを指します。具体例としては「apple」「chair」「dog」「book」などが挙げられます。冠詞(a / an)が必要になる場合や、複数形(-sや-esを付ける)がある点が特徴です。

例①:I have an apple.「私は1つのリンゴを持っています。」
例②:I bought two books.「 私は2冊の本を買いました。」

不可算名詞(数えられない名詞)

形として区切れないものや、量や性質として捉える「抽象的な概念」を指します。具体例としては「water」「information」「furniture」「advice」などが挙げられます。冠詞(a / an)が付かず、複数形にもなりません。

例①:I need some water.「私は水が少し必要です。」
例②:This information is very useful.「この情報はとても役に立ちます。」

同じ単語でも文脈によって可算か不可算かが変わる

英語では、文脈に応じて可算・不可算が変化する単語もあります。たとえば「fish」は丸ごとの1匹を指すときは「a fish」として可算扱い、切り身やすり身の量を指すときは「some fish」として不可算扱いになります。このように、形として認識するか、塊としての量で認識するかがポイントです。

集合名詞(Collective Noun)とは何か

「staff」のように、複数の要素(人や物)が集まって1つのまとまりとして認識される名詞を集合名詞(Collective Noun)と呼びます。代表的なものに「family」「team」「police」「government」などがあります。

集合名詞の基本的な特徴

・1つのまとまりとして捉える場合は単数扱いする
・メンバー個々に焦点を当てる場合は複数扱いも可能(主にイギリス英語で顕著)

イギリス英語とアメリカ英語における集合名詞の使い方の違い

ギリス英語では、文脈によって単数・複数のどちらでも使うことができます。たとえば「The team is strong.(チーム全体が強い)」と言うこともあれば、「The team are strong.(チームの一人ひとりが強い)」と表現する場合もあります。

アメリカ英語では、集合名詞を単数扱いすることが一般的です。つまり「The team is strong.」「The staff is kind.」というように、基本的には単数動詞が用いられます。

『staff』が不可算名詞かつ集合名詞である理由と正しい使い方

「staff」はビジネスシーンで頻繁に使われるため、一見すると「人数」を思い浮かべて「a staff」や「staffs」という形で言ってしまいそうですが、正しくは不可算名詞(Uncountable Noun)であり、同時に集合名詞(Collective Noun)でもあります。

なぜ「staff」は不可算名詞かつ集合名詞なのか

①不可算名詞として

「staff」は、従業員やスタッフの集団を1つの抽象的な「塊」として捉えるため、1人・2人と数える発想がありません。

例:不可算名詞なので a stafftwo staffs とは言えない。

②集合名詞として

「staff」は「family」「team」「government」などと同様、1つの集合体(まとまり)として扱います。

【アメリカ英語では単数扱いが主流】
The staff is working on the project.(全体として単数扱い)
「スタッフはそのプロジェクトに取り組んでいます。」

【イギリス英語では複数扱いも可能】
The staff are working on the project.(メンバー個々に焦点を当てた場合)
「スタッフのメンバーがそのプロジェクトに取り組んでいます。」

間違えやすい用法:「a staff」や「two staffs」は誤り

誤:I am a staff at this company.
「私はこの会社の杖です。」「staff」は個々の従業員ではなく「杖」として解釈されてしまいます。

誤:We have two staffs in the sales department.
「営業部には2本の杖があります。」「staffs」は「杖」の複数形になるため、「従業員」の意味にはなりません。

これらはどちらも人数を表現したい意図があると思われますが、正しい英語ではありません

「staffs」は「杖」の複数形

先述したように、「staff」の複数形である「staffs」は通常「杖(つえ)」や「棒」の複数形を示すときだけ用いられます。「従業員」の意味で「staffs」と言うのは誤用なので注意しましょう。

例:The old man had two staffs to help him walk.
「老人が2本の杖を持っていた」

アメリカ英語とイギリス英語での扱い方

【アメリカ英語:単数扱いが主流】

例:The staff is ready to start the project.
「スタッフはプロジェクトを開始する準備ができています。」

【イギリス英語:単数・複数どちらの扱いも可能】

例①:The staff are all very experienced.(メンバー個々を意識)
スタッフはプロジェクトを開始する準備ができています。」
例②:The staff is a cohesive unit.(全体を1つのまとまりとして捉える)
「スタッフはまとまりのある組織です。」
例③:The staff are all very experienced.(集合体のメンバーに焦点を当てる場合は複数扱いできる)
「スタッフのメンバーは全員とても経験豊富です。」

アメリカ英語とイギリス英語の違いについて詳しく知りたい方は、下記の動画をご覧ください。英語『The Holiday(邦題:ホリデイ)』を題材に、アメリカ英語とイギリス英語で使われる発音やフレーズの違いについて、解説しています。

アメリカ・イギリス英語の発音を身に付けるトレーニング動画↓

上記は旧ブランドThe DooRで撮影された動画です。現在はビズイングリッシュコーチとして運営しております。

ネイティブの感覚と不可算名詞の捉え方:学習のコツ

英語には「可算名詞」「不可算名詞」「集合名詞」といった概念があり、日本語にはない視点が多いため、学習者は苦労しがちです。ここでは、ネイティブスピーカーがこれらの名詞をどのようにイメージして使っているのか、理解するために重要なポイントを挙げます。

形があるか、量として捉えるかを常に意識する

不可算名詞かどうかを判断する際、「1つ2つと数えられるか、それとも量や抽象概念なのか」を見極めることが大切です。ネイティブ話者は日常的にその認識を言葉選びに反映させています。

集合名詞は「まとまり」をイメージする

「staff」のほか、「team」「family」「police」「government」などは、複数の要素が集まって1つの塊と考えるのがポイントです。単数・複数どちらの扱いにするかは、「全体を指しているのか、メンバー個々を指しているのか」をイメージすることで区別します。

音読や会話練習で定着させる

可算・不可算の区別や集合名詞の使い方は、頭で理解していても咄嗟に言い間違えることが多々あります。

例:つい「a staff…」と言ってしまう など。

そのため、音読や会話練習などで「感覚」として身につけることが大切です。

英語を「知識」として覚えるだけでなく、「感覚」として身につけることで、スピーキング、リスニング、ライティング、リーディングで使える「スキル」に変わります。

英語4技能を伸ばすための実践的学習法

ここからは、「staff」のような集合名詞を正しく使うだけでなく、英語力全体(話す・聞く・読む・書く)の向上につなげるための学習法を解説します。

筆者の恩師であり、学習カリキュラムのアドバイザーを務める言語学者のデキキス・ジョー教授は、次のように強調しています。

正確な英会話ができるようになるためには、ネイティブスピーカーが持っている感覚を身につけることが重要だ。『認知文法』を取り入れた学習法を実践すれば、スピーキング、リスニング、ライティング、リーディングの4技能を総合的に伸ばせる。

この考えに基づき、筆者が運営するビズイングリッシュコーチ(Biz English Coach)では、認知文法の知見を活用したカリキュラムを提供しています。

認知文法とは

認知文法は、文法を単なるルールとして捉えるのではなく、場面や状況に応じて理解するアプローチです。ネイティブスピーカーがどのように言葉を認知し、使い分けているのかという思考過程を模倣するため、英語を英語のまま理解する感覚を身につけやすくなります。

この視点は、従来の「文法規則+日本語訳」といった暗記中心の学習を超えて、実際のコミュニケーションの中で言語を運用する力を養うことを目指すものです。

認知文法の効果

①処理スピードの向上

認知文法を用いると、日本語を介さずに直接英語を理解するプロセスが身につきます。その結果、リーディング・リスニングですぐに意味を理解できるようになるため、コミュニケーション全体のスピードが向上します。

②暗記効率の向上

従来の学習方法では、大量の文法事項や単語を日本語訳とともに覚える必要があり、学習負荷が大きくなりがちでした。

一方、認知文法では、イメージや文脈を重視して理解するため、必要な暗記量が減り、頭に定着しやすくなります。余ったリソースを使って、より多くの英語表現や文献、会話に触れられるようになり、実践的なスキルの強化につながります。

③英語の感覚の習得

認知文法を取り入れた学習は、英語を「日本語に訳して理解する」のではなく、英語としての構造や場面を直接イメージしながら身につけるため、場面ごとにどんな表現が自然かを判断しやすくなり、ネイティブの感覚に近い運用能力を獲得できます。

たとえば「staff」の使い分けも、単なる暗記ではなく、「集合名詞をどう捉えているか」「なぜ不可算名詞なのか」といったネイティブ視点で理解可能になります。

【研究で示唆される認知文法の優位性】

言語学や第二言語習得(SLA)の研究でも、認知文法のアプローチは4技能(読む・書く・聞く・話す)を相乗的に伸ばす効果が示されています。単なるルールの暗記では習得できない自然な言語運用能力を高めるため、ビジネスやアカデミック、日常会話など、幅広いシーンでの英語力を身につけることができます。

実践的学習法:インプットとアウトプットを組み合わせる

認知文法の考え方をベースに、英語4技能を効果的に伸ばすためには、インプット(読む・聞く)とアウトプット(書く・話す)をバランスよく学習することがポイントです。

①リーディングとライティング

英文を読むときは、なぜその表現が使われているのかを文脈やイメージとともに理解することが重要です。その後、学んだ表現を実際に書いてみます。ただ単に単語や文法を覚えるだけでなく、どの場面や状況で使われるかを意識しながら書くことで、定着しやすくなります。

「staff」の例でも、「a staff」や「two staffs」が間違いである理由を理解したうえで、「staff member」を正しく使えるようになることが重要です。

②リスニングとスピーキング

英文を読むときは、なぜその表現が使われているのかを文脈やイメージとともに理解することが重要です。その後、学んだ表現を自分の文章に取り入れて実際に書いてみます。

・ただ単に単語や文法を覚えるだけでなく、どの場面や状況で使われるかを意識しながら書くことで、定着しやすくなります。

・「staff」の例でも、「a staff」や「two staffs」が間違いである理由を理解したうえで、「staff member」を正しく使えるようになることが重要です。

③フィードバックと修正

自分が書いた文章や話した内容に対して、ネイティブスピーカーや指導者からのフィードバックを受けることで、さらに学習効果が高まります。

・最近では、AIツールを活用して、ライティングの訂正や発音チェックを受けることも可能です。

・フィードバックをもとに間違いを修正し、同じミスを繰り返さないようにすることで、英語力を着実に向上させることができます。

まとめと今後の学習計画

①認知文法を取り入れる

英語を「ルール+和訳」で暗記するのではなく、場面・状況を意識して理解し、イメージで把握することを意識する。

②インプットとアウトプットを両立させる

リーディング・リスニングで理解した内容を、ライティング・スピーキングで実際に使って試す。

フィードバックを活用しながら、「理解」と「運用」を繰り返す。

③ネイティブの感覚を追体験する

単語や文法の表面的な意味だけではなく、「ネイティブがどう認知しているか」をイメージしてみる。これにより、自然な表現やニュアンスの違いを体得しやすくなる。

認知文法のアプローチをしっかりと取り入れることで、日常会話やビジネスシーン、プレゼンテーションなどあらゆる場面で使える英語力を養えます。単なる暗記とは違った「感覚的な理解」が身につくため、長期的にも大きな効果が期待できます。

練習問題とチェックリスト

【練習問題】

  1. 次の文の誤りを正してください。

    誤:I am a staff at the company.
    正:____________

  2. 「staff」を使って、従業員数を具体的に表現する正しい文を作ってみましょう。
    例:____________

【正解と解説】

  1. I am a staff member at the company.

    「一人のスタッフ」と言いたい場合は「a staff member」とする。

  2. There are five staff members in our department.

    「私たちの部署には5人のスタッフがいます。」のように、人数を言うときは必ず「members」を使う。

【チェックリスト】

可算名詞と不可算名詞の違いを理解している
文脈に応じた名詞の使い分けができる
「staff」の適切な使い方(集合名詞として/個々を示す場合は「staff member(s)」)を把握している
実践的な学習方法(音読、会話練習、アウトプットのサイクル)を日々の学習に取り入れている

FAQ(よくある質問)

Q1: なぜ「staff」は不可算名詞なのですか?
A1: 「staff」は、従業員全体を1つのまとまりとして捉えるため、個々を直接数えない概念だからです。

Q2: アメリカ英語とイギリス英語で「staff」の使い方にどんな違いがありますか?
A2: アメリカ英語では単数扱いが一般的ですが、イギリス英語では文脈に応じて単数・複数どちらも使われます。

Q3: 「staff member」と「staff」はどう違いますか?
A3: 「staff member」はスタッフ個々を指し、具体的な人数を表すときに用います。「staff」は集合体としての従業員全体を表します。

参考:「The Oxford Advanced Learner’s Dictionary」によると、アメリカ英語は集合名詞を単数形で用いる傾向が強い一方、イギリス英語では文脈に応じて単数または複数を使い分けるとされています。

この記事の概要と「ネイティブの感覚」を身につける重要性

本記事では、

・可算名詞と不可算名詞の違い
・集合名詞「staff」の正しい使い方
・アメリカ英語とイギリス英語での扱い方の違い
・認知文法をはじめとする実践的な学習法

を中心に解説してきました。

「staff」ひとつを取っても、日本語にはない「不可算名詞」や「集合名詞」という概念が絡むため誤用が起こりやすいポイントです。ネイティブは日常的に「これは形として数えるのか?」「まとまりとしてとらえるのか?」と自然に認識しています。単なる暗記だけでなく、ネイティブの感覚や認知プロセスを理解することが、本当の意味で「使える英語」を身につける近道です。

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プロフィール

  • 専属パーソナルコーチ

    瀧内俊之
    (Toshiyuki Takiuchi)

    関西学院大学で英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学について学ぶ。米国のエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出の研究に従事。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、ビズイングリッシュコーチを設立。

  • 学習カリキュラム監修者

    デキキス・ジョー教授
    (Joseph DeChicchis)

    関西学院大学総合政策学部教授。英語習得学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学の研究に従事。世界各国の英語アクセントに精通している。ビズイングリッシュコーチでは、英語習得学の知見を活かし、発音矯正、文法理論、スピーキングメソッドなどの学習カリキュラムやオリジナル教材の監修を担当。

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